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【対談】作り手のこだわり -生産者と職人の想い-

ふわふわのパンにたっぷりクリームが特徴の「サンチの牛乳パン」。
地産地消にこだわった牛乳パンの生地には、長野県小布施町にある老舗牛乳店「オブセ牛乳」の牛乳を使用しています。

今回はサンチの牛乳パンの開発者で弊社ベーカリーマイスター植木が、オブセ牛乳代表取締役社長の西岡さんと、牛乳パンについて素材やこだわり、想いを語ります。

──「牛乳パン」とはどういうものでしょうか?

西岡社長 :
牛乳パンといえば長野県ですよね。長野出身ではないのでソウルフードとまでは言えませんが、牛乳パンは好きです。牛乳パンを食べている時にふと、『牛乳パンの定義って?』って思うことがあります。パンの間のクリームが白色で牛乳っぽいから「牛乳パン」なのかなあと思ったりします。実際のところはどうなんでしょう。

植木 :
定義は難しいのですが、生地に牛乳を使用しているというのが昔からの牛乳パンの流れではあると思います。基本的には生地に牛乳を使用していれば牛乳パンなのかなという感覚はあります。しかし、やはり牛乳パンは「かたち」も重要だと思います。例えば、ロールパンにクリームを挟んでも、牛乳パンとは呼べないのかな、と思っています。大きく四角い、というイメージを持つ人が大半ですが、差別化して丸くしてみようかなと思い、今回丸い牛乳パンを開発しました。それがどこにもない、新しい牛乳パンとして売れている1つの理由にもなっていると思います。

西岡社長:
長野県で皆さんが思い浮かべる牛乳パンは、昔からあるパン屋さんの、四角くてレトロでかわいい絵柄の牛乳パンだと思います。でも最近は、いろいろなパン屋さんでも大手メーカーでも作っているので、丸型のパンもとてもいいと思います。

左:オブセ牛乳代表取締役社長の西岡さん
右:弊社ベーカリーマイスター植木

──サンチの牛乳パンのお勧めポイントはどんなところですか?

西岡社長:
県内で各パン屋さんは、それぞれの特徴があり皆さんそれぞれ、お好みの牛乳パンがあると思いますが、私はSANCHさんの牛乳パンが好きです。
SANCHさんの牛乳パンを食べると、生地はふわふわしていて、クリームもしつこさがなく、さっぱりしています。1個食べた後も、あれ!もう1個食べられるかな!ってなるんですよね。

植木:
大きい割にはさっぱりしていていけちゃう!

西岡社長:
半月に切ってあるけど、丸のままいけちゃいます(笑)丸の状態で買いたいですね!

植木:
ありがとうございます!次の商品開発に活かしたいと思います。

西岡社長:
もう1個食べようかなという感覚は、他の牛乳パンには無いところだと感じます。食べやすいし、飽きないし、後味もさっぱりしています。あと一番はパンがふんわり軽くてもパサパサしていないところですね。人にもお勧めしやすい。すごく研究、努力されて開発されたんだろうなあというのが伝わります。

植木:
ありがとうございます!昔のコッペパンや食パンは、パサパサしたイメージが強く、のどが渇いてしまう感じがありますね。開発したパンはふわふわもちもちの生地にこだわりました。おかげさまでご好評をいただいております。

西岡社長:
そうですよね。確かにコッペパンなども生地がもちもちしていておいしいなと思っていました。SANCHさんの食パンもふわふわしていますよね。ふつうの食パンは焼いて食べるのが当たり前みたいなところがありますけど、SANCH さんのパンは焼くのがもったいない、ジャムも塗っちゃだめだ、くらいのこだわりが見えますよね。そのまま食べるのが一番おいしい食べ方なんですよね。

植木:
そうですね。まずはそのまま食べていただきたいですね。

▲パンは全て手作り。独自の製法で生地から作っています

──オブセ牛乳のおいしさの理由について教えて下さい。

植木:
オブセ牛乳さんの牛乳はコクがあってパンがとてもおいしくなる。相性というのが、素材にはあるんだと思います。牛乳パンはオブセ牛乳さんでないとだめだと思っていますが、オブセ牛乳さんのおいしさの理由は何ですか?

西岡社長:
オブセ牛乳は、創業から約70年ですが、「80℃15分間の殺菌方法」にこだわってきました。創業時にいろいろ試した中で、妻の祖父である創業者が牛乳を一番おいしいと感じるこの製法を採用して、これまで変わらずそれを続けてやってきています。牛乳は殺菌温度・時間によって、味わいが異なってきます。どの殺菌方法でもおいしい牛乳に仕上がりますが、国内の主流となっている超高温殺菌(120~130℃で2~3秒)だと、私の感覚ではライトな味わいとなります。また低温殺菌(63℃で30分間)だと、確かに甘み等がありますが、それでもさっぱりした感じがあります。80℃あたりで殺菌すると、甘みもあり、濃く感じる味わいがでてきます。これがオブセ牛乳の大きな特徴です。

──オブセ牛乳さんの一日のお仕事を教えて下さい。

西岡社長:
朝は4時半頃からスタートし概ね午前中に牛乳の製造が終わります。午後は、機械を洗ったり、工場内の片づけをして、また翌日の準備を行います。毎日、平均で約2500Lの牛乳を製造しています。主には1Lの紙パックでスーパー等へ納品しており、また小布施町や高山村の学校等に小ビンを届けています。
毎日変わらず作り続けていますが、もし機械が一つでも動かなかったりすると、牛乳を製品にすることができなくなるので、機械が止まらないよう日頃のメンテナンスが重要です。パン製造でもそうですよね。

植木:
同じですね。機械が動かなかったら何もできなくなってしまうので大変ですよね。

西岡社長:
今は工場長が毎日、丁寧に機械の点検をしたり、機械の調子が悪い時に直してくれますが、今後は工場長と同じように誰でもできるようにすることが大きな課題です。

植木:
それが一番難しいですよね。

▲長野県高山村の前田牧場とオブセ牛乳本社工場の様子

──仕事のやりがいをどんなところに感じていますか?

西岡社長:
「オブセ牛乳いつも買っているよ、おいしいよ。」と言ってくださる声が、何より私たちの原動力となっています。おいしくなるよう真心をこめて毎日製造しています。

植木:
とても分かります。今後は牛乳以外は作らないのですか?

西岡社長:
牛乳は原材料価格が上がる反面、販売価格があまり上がらないこともあり、製造品目が牛乳のみでは、経営的には厳しくなってきています。私がオブセ牛乳の経営を後継して約3年ですが、今後は牛乳以外の何かにも挑戦したいと思っています。

植木:
パンを作っていて、オブセ牛乳のバターや生クリームがあったらいいなと思うことはあります。

西岡社長:
大手メーカーと異なり、小ロット製造となるため、どうしても高い製品になってしまうと思われます。ただ、その製品を購入いただいた方が、使ってみて喜んでいただけるものを作らなければ、そして、とても難しいことですが、それが価格に見合うものであればいいかと思います。

──オブセ牛乳さんのレトロでかわいいロゴはどのようにつくられたのでしょうか?

西岡社長:
ロゴの考案者である妻の祖母から、由来を聞く前に他界してしまったため、創業当時の時代背景からの推察になりますが、昔の牛乳屋さんで赤ちゃんの絵を使っているところが多くありました。日本が戦後から高度成長期に向かおうとするその当時、高機能な健康食品はありませんでした。なので、栄養たっぷりの牛乳を子供たちに飲んでもらって元気に育ってもらいたい、との思いが込められていると思います。
また、月と星のマークですが、「子供たちの夢」みたいなものを月や星のマークに乗せているのだと思います。祖母がハイカラな人だったので、そのあたりもデザインに反映されているような気がします。近年では、オブセ牛乳のロゴがレトロでかわいいと、言ってもらえる機会が増えてきました。

──ロゴを使ったオリジナルグッズがかわいいですね。

西岡社長:
ありがとうございます。レジ袋廃止により、トートバックをご購入いただくお客様が少し増えました。長野市内でトートバッグ専門の五岳舎さんによる手作りで丁寧に作られております。毎日使っていただくことで、オブセ牛乳により愛着を持っていただけたらと思います。

──最後にパンと牛乳、素材選びのこだわりについて教えて下さい。

植木:
私が作るパンには基本的に牛乳を入れていますが、オブセ牛乳が一番コクが出るので使っています。

西岡社長:
コッペパンやサンドイッチ等沢山の具材の種類がありますが、甘いものや、和洋中な具材、どれにもあうパンを作るのはとても難しいのでしょうね。

植木:
そうですね、本来なら甘い素材に合うパン、惣菜用のパンで分けたいのですが、1 日のスケジュールや工程を考え、どちらにも合うパンになるようバランスを整えて開発しています。
挟むものを選ばない生地作りを心がけています。あと、もっちり感を出したいときには、炊いたご飯を入れるなどしています。食感も味の一つなので。味は入れる素材でいろいろ考えられますが、食感を変えるための方法をいつもいろいろ考えさせられます。

西岡社長:
SANCHさんの、おいしいパンに対するこだわりを聞いて、一層SANCHさんのパンが好きになりました。

植木:
ありがとうございます!

西岡社長:
私は牛乳を配達に行ったときにSANCHさんのパンをついつい買うんです。価格的にはちょっぴり高めかなと思いますが、おいしいから買います。

植木:
値段はそうですね、製造原価はとても考えています。いいものを使おうと思うと、販売価格が高くなるのでどこまでこだわるか。その辺の線引きは重要ですね。

西岡社長:
オブセ牛乳は高くて買えないんだよね~おいしいから買いたいんだけど、というお客様はいます。
少量生産で手間ひまもかかる製法のため、大手メーカーの牛乳と比べてどうしても価格は高くなってしまいます。それでも小布施町の皆様は「オブセ牛乳がいい」と買っていただけるのでありがたいです。

植木
自分は毎日飲むものだからいいものを、おいしいものを飲みたいと思います。

西岡社長:
以前、「オブセ牛乳で牛乳パンは作っていないのですか?お土産に買いたいのですが」とお問い合わせをいただいた時に、「オブセ牛乳では牛乳パンは作っていませんが、SANCHさんでオブセ牛乳を使って、おいしい牛乳パンを作っていますので、ぜひ一度買ってみてください」SANCHさんの牛乳パンを紹介したことがありました。

植木:
ありがとうございます!
これからも価格以上の価値を感じられる、こだわりのある商品でお客様に喜んでいただきたいです。